社労士法改正と労務監査――制度の流れと、銀行監査経験から腑に落ちた理由

社労士法改正と労務監査――制度の流れと、銀行監査経験から腑に落ちた理由

昨年、社会保険労務士法が改正され、「労務監査」が社会保険労務士の業務として法律上明記されました。

労務監査という言葉自体は、以前から使われてきましたが、今回の法改正により、その位置づけがより明確になったといえます。企業経営において、労務管理の状態を客観的に確認する必要性が、制度の面からも示された形です。

こうした法改正の流れを受けて、先日、社会保険労務士向けに「労務監査」をテーマとしたセミナーが開催され、私も参加してきました。

セミナーの内容を聞きながら、私は不思議な既視感を覚えていました。

というのも、私は以前、銀行に在籍していた頃、内部監査に関わる業務を経験していたからです。当時は「労務監査」という言葉は使っていませんでしたが、実際に確認していた視点は、今振り返ると非常によく似ていました。

たとえば、次のような点です。

  • 契約の形式と、現場での指揮命令のあり方が一致しているか
  • 労働時間制度が、規程どおりではなく実際の運用として回っているか
  • 業務量や指示の出し方が、記録された労働時間と乖離していないか

いずれも、書面が整っているかどうかを見るのではなく、現場の実態が制度やルールと整合しているかという観点でした。

今回のセミナーで語られていた労務監査も、まさに同じ考え方に立っていると感じました。問題点を指摘することが目的ではなく、将来のトラブルを未然に防ぐために、「今の状態を客観的に確認する」。その姿勢は、監査という仕事に共通するものだと思います。

※以下は、特定の組織や事案を示すものではなく、これまでの実務経験を通じて得た一般的な気づきです。

制度や規程は、作ること自体が目的ではありません。実際の業務の中で無理なく運用され、いざというときに「説明できる状態」にあることが重要です。

社労士法改正を受けて、労務監査があらためて注目されている今、それは企業を縛るためのものではなく、安心して事業を継続するための「点検」として捉えられるべきものだと、私は考えています。

なお、社会保険労務士に依頼することで、労務管理の状況について、一定の枠組みに基づいた確認を行うことが可能です。

具体的には、社会保険労務士会が運用している「社労士診断認証制度」や、経営労務監査といった仕組みを活用することで、自社の労務管理の状態を客観的に把握することができます。

これらは、「問題があるかどうかを指摘するため」のものではなく、現状を整理し、今後に備えるための手段といえるでしょう。

今後、このブログでは、労務管理や労務監査について、実務に即した形で少しずつ整理していきたいと思います。