— 年金制度改正を中心に、これから数年の実務ポイントを整理します —
先日、奈良県社会保険労務士会の研修として 「会社の社会保険実務に影響する近時の法改正」をテーマとしたセミナーを受講してきました。
2025年の通常国会で成立した年金制度改正を中心に、 今後数年で企業実務にどのような影響が出るのかが非常に整理された内容でした。 今回は、事業主・人事担当者の方向けに「ここだけは押さえたいポイント」をまとめます。
1.今回の改正の大きな流れは「適用拡大」
今回の年金制度改正を一言でいうと、 「社会保険の適用を広げていく流れが本格化する」という点です。
- 働き方の多様化(短時間・高齢者就労の増加)
- 年金制度の持続可能性確保
- 老後の所得保障の強化
会社としては、手続きだけでなく人件費・雇用設計にも影響しうるテーマなので、 「いつ・誰が・どう変わるか」を早めに整理しておくのが得策です。
2.短時間労働者の社会保険適用がさらに広がります
◆ 賃金要件(月額8.8万円)の撤廃へ
これまで短時間労働者の社会保険加入の判断では、 所定労働時間や勤務期間に加えて月額賃金8.8万円以上といった要件が意識されてきました。
しかし今後は、最低賃金の上昇などを背景に、 賃金要件(月額8.8万円)の撤廃が検討(~3年以内の目途)とされています。
実務メモ: 「パートさんは8.8万円未満だから大丈夫」という判断が、将来的に通用しにくくなります。 採用時・契約更新時の説明(手取りの変化等)も含め、準備しておくと安心です。
3.企業規模要件も段階的に見直し(2027年10月~)
これまで社会保険の適用には、いわゆる企業規模要件が関係してきました。 ただ、2027年10月以降は、企業規模にかかわらず適用対象が広がっていく方向で整理されています。
中小企業・小規模事業者にとっても 「うちは対象外」ではなく、いずれ対象になり得る前提で 人員計画や雇用条件を点検する必要が出てきます。
4.事業主の負担に配慮した「負担軽減策」もセット
適用拡大というと「会社負担が増える」という印象が先行しがちですが、 セミナーでは事業主の負担軽減策も併せて示されていました。
- 社会保険料負担の調整(段階的な考え方)
- 一定期間の負担軽減措置
- 相談・支援体制の整備
特に新たに加入対象となる方が増える局面では、 「制度対応」だけでなく、現場の納得感(説明・合意形成)がカギになります。
5.高齢者雇用・在職老齢年金にも影響
今回の改正は現役世代だけでなく、65歳以上の在職者にも影響が及びます。 「働きながら年金を受け取りやすくする」方向で見直しが進むため、 高齢者雇用を進める会社ほど、賃金設計や雇用条件の見直しが実務上のテーマになります。
まとめ|「知らなかった」で慌てないために
制度改正は段階的に進みますが、実務の現場では 「気づいたときには対象になっていた」「後追い対応で混乱した」 ということが起こりがちです。
社会保険の適用拡大は、単なる手続きではなく 人件費・雇用設計・働き方の見直しにも直結します。 早めに情報整理と準備をしておくことが、結果的に会社を守ることにつながります。
もし「うちの場合、いつから・誰が対象になりそう?」という点を整理したい場合は、 現状の雇用形態(所定労働時間・賃金・契約期間など)を棚卸しするだけでも、かなり見通しが良くなります。
今後も、実務に役立つ制度改正のポイントを、できるだけわかりやすく発信していきます。

